百科事典の思い出
百科事典か。懐かしいな。
小学生の頃、家のサイドボード(というのもいかにも昭和っすよね)の中にズラーーっと百科事典が御座しましたわ。たしか小学館だったかな。子供向けじゃなくて本格的なやつだった。茶色でいかにも「百科事典」っぽい風貌のやつだった。まぁ、当時、何事も外見から入る親だったみたいで、多分特に意味もなく買ったのだろう(or買わされたのかも知れぬが)。
小さい頃は近づき難い存在で、とくに親から言い付けられてた訳ではないが、「これは開いてはいけないもの」と感じていた。でも、小学4年くらいになって、なんかのきっかけで、一冊を取り出して開いてみた。なんかこう、思春期の始まりとリンクしていたんだと思う、イケナイものに対する好奇心、自分にとってのそれは、この百科事典だった。
開いてみたら、ピカピカでツルツルの紙で、横書き2段組くらいの両面は、小さい字と写真でびっしり埋められていた。恐らく一度も開かれたことのなかったのだろう。買ったはいいが、我が家にとっては書物ではなくインテリアの一部だった、いやインテリアですらなかったかもしれん、もはや完全に忘れ去られた存在だったに違いない。そんなわけで、中身はとても綺麗だっだのを覚えてる。
その後、時間のある時よくリビングのカーペットの上に百科事典を何冊か並べて、「宇宙」とか「地球」とかいう項を読んでいた記憶がある、中身は覚えていないが。しかし一方で、いいから早くしまえみたいなことも言われて気がする、まぁとにかく、うちの家庭では、百科事典は何かしら忌み嫌われてる存在なのかもと、その時薄々感じた。こんなに面白い書物なのに、と。
その頃事情があり引っ越しをすることになり、百科事典ともお別れすることになった。その引っ越しは当時の自分にとって大きな出来事で、その後百科事典の事なんてすっかり忘れてしまった。いま振り返ってみると、小さい頃の家の思い出の風景の一つとして、記憶にのこっている。あのクソ重い書物は、結局一体どこへ行ったんだろう。